摺子発電所水路隧道


奈良県


その3

  

 さあ、またしても巨大隧道の胎内へと舞い戻っ
て参りました。
 こんなドでかい穴が一体どこまで続いている
のか。。。
 右:発電所方面
 左:落筏路(スタート地点)
  。。。いやあ〜。。。

 真っ暗ですなあ。。。
 むむむ!?
 こ、これはこうもりさん。。。
 洞内天井にびっちりたむろしています。
 うむおっ!居すぎ!
 この一粒一粒が全てこうもりさんです。。。
 。。。気を取り直して。。。
 水の溜りが気になりますが、端っこを歩いて
れば問題ない状態が続きます。
 
 。。。んんんん!?
 なんか光が見える!?
 さらに進むと。。。
 天井が。。。アーチではなくなっているでは
ないか。。。

 光は先に進んだ仲間のライトのようです。
 おおお。。。
 岩盤剥き出しではないか。。。
 この岩盤をこれだけのでかさで掘削するとは、
余程の手間と労力がかかっているでしょうなあ。
 おや?
 先行隊が止まっています。
 どうやら何かあるようですが。。。
 ちなみに下の水がなくなり、細かな石礫が
堆積しています。
 んんんん!?
 瓦礫が多くなってきましたが。。。
 
 。。。?何か天井に穴、開いてません?

 うおおお。。。?
 なんだこりゃ!?天井に結構なでかさの四角い穴が開いとります。
 
 2m近い分厚いコンクリ壁を貫通して、あるのは
何と下界の景色。。。
 なんなんだこりゃ、明り取り?通気口?
 通気口やろな。。。筏師さんも通過するわけや
しな。。。

 上れそうな足場は一切なし。こりゃあ下界へ
抜け出す術はおまへんな。。。
 。。。さあ問題なのがここからです。。。

 ご欄のように、この通気口を境に突然の水没。
 奥は全く見通せずのこの状況に、一同愕然。
 折角ここまできたのにこれはないやろ〜。。。

 漆黒の闇に 仄明るい緑光と巨大な影。。。
 
 なんて、仲間の特殊な照明に照らされたわたくしめですけどね。。。
 あはは。。。さあ、どないしょ。。。
 

 。。。???
 おやあ?私は今どこにいるんデショカ?
 陸地が途切れている筈の場所に居る。。。?
 陸地では、まるで三途の川を渡る死人(シビト)を送るような眼差しを当方は受けておりますが。。。 
 恐る恐る一歩一歩。。。
 右手の壁に張り付きつつ歩を進めます。。。
 当然長靴装備しております。。。
 
 。。。ずぶぶ。。。ずぶぶ。。。いやな感触が
長靴を通して感じられます。。。泥や。。。泥の
感触。。。泥濘っす。。。

 幸い泥は深くなく、水深も長靴で対処できる
程度。。。
 上空では岩盤剥き出しの天井の下を、こうも
りさんが縦横無尽に飛び交っています。
 あああ、陸地が遠のく。。。
 これ、なんとなく行けそうな感じがするのがま
たいやらしい。。。
 こりゃ、進むしかないのか。。。

 三途の川を見守っていた仲間もどうやら何人か
続いて下さっている模様。
 ありがたし!

 ちなみにフラッシュなしだとこの暗さ。。。
 ぬううう。。。歩きにくい。。。
 泥もそうですが、水路なので床が中央付近に
向けて湾曲しています。
 歩くたびに足が中央よりに取られることしばし
ば。。。
 ふう。。。 
 。。。あんまり写真撮る余裕がありません。。。
 きつい。。。

 長靴は泥には不向きですな。。。足を抜こうと
する度に長靴が脱げそうな感覚がして、余計な
力が入ります。。。
 もうどのくらい歩いたのか。。。
 どうもさっきから前方に光が見えるような気が
するんですよね。。。
 さらに、水の音も聞こえます。ばちゃばちゃば
ちゃ、と。。。
 出口あるのか!?
 とにかくこの状況から一秒でも早く脱出した
い!

 むむむむむ!
 フラッシュだとよく分かりませんが、フラッシュなし撮影だと。。。また穴開いとるがな!!!
 出口ではありませんでした。。。
 1個目の点検口から泥を進むこと30分余り。。。2個目の点検口の登場です。。。ふ〜
 
 ここも分厚い天井から見える景色は1個目と
変わりません。。。
 なんか碍子もぶら下がってるし。。。
 下に堆積物がない分、大分高い位置にある
ように見えます。
 下界の景色はどんなんだ〜 
 こんな奥深くまで、きっちり巻き立てられてい
ます。当たり前なんでしょうが、やはりこの長さ
は驚かざるをえません。
 碍子も等間隔にあるようですし。
 先ほどから聞こえていた水の音はどうやらこれ
のようです。
 この水が泥濘化を促進してんだな。。。全く。
 さて、と。
 あんまり向き合いたくない現実と向き合わない
とな。。。
 この第2の点検口から先。。。全く変わることの
ない漆黒の洞内が果てしなく続いているように
見えます。
 しかもこの先もずっと泥濘っぽいし。。。

 第2口の真下で会議中の面々。。。
 先の明かりが見えないことが、ますます萎える原因となってます。
 またあの泥濘を30分かそれ以上か分からない歩行を続けるのか。。。足は結構キてますが。。。
 。。。少しづつ確認。。。
 やっぱりめ一杯泥濘です。。。はあ。。。

 すでに半分に減った隊員ですが、この先どう
します?
  。。。実はここから先は写真を殆ど撮れており
ません。
 撮る余裕全くなし。。。
 泥濘は第2口以前より遥かにレベルアップ。
 その深さと、締め付け感が増大。歩くたびに
長靴が抜けそうになり、余計な体力を使います。
 一歩進むのにかける時間が一気に増大。。。

 。。。これが最後の写真です。。。
 現在10時10分。。。第2口を出たのは確か9時40分ぐらいだったはず。30分経ちましたが、依然向こうの光は
見えません。。。泥の深みきつさも一層アップ。。。あ、足が。。。辛い。。。
 ここまで来ているのは、ぱぱんさん、ピカさん、私の3人ですが、皆一様に無言です。
 しかしこの泥濘はもはや体力、精神的に無理!無理無理!無理無理無理!!!
 決定的な通行不能区間が出なければ決して引かなかった、最凶メンバーが完全屈服。。。
 撤退だ。。。
 気がつけばあの仮設梯子を登っておりました。
 おおお。。。下界だ。。。下界の光が見えて
きた。。。
 無事生還!
 時間は10時48分
 撤退決断から38分で戻ってきました。
 撤退早!
 戻ってから、ふと気になっていた場所をチェック
しときました。
 摺子の村道から探すと、予想通りありました。
 これ、隧道の発電所側出口から見下ろした
物件の続きです。
 ここに導水パイプが後方に向かって伸びてい
たはずです。
 ということは、村道を挟んで北山川側にも。。。
 ありました。。。。。。が。。。?
 なんだあの不気味な色は。。。?
 す、すげえ。。。
 なんだこの緑色の光る物質は。。。
 実はこれ、北山川の水面下の景色です。
 なんという幻想的な廃景か。。。

 昔はこのまま発電所建屋までパイプが繋がっ
ていたのではないでしょうか。
 そしてもう一つ確認すべきものが。
 あの隧道発電所側からの水の流出経路は、
送水管ともう一つ、水門からのウォータースライ
ダーです。
 ありました!
 やはり村道からすぐ見上げられる場所に残っ
てました。
 上のほうに水門が見えますねぇ。
 朝、あそこから下を覗いておりました。
 北山川側にも。。。やはり。
 ぶった切られたコンクリートの排出管が遺構
になって残ってました。
 村道を開設する際にぶった切ったんでしょう
ねえ。
 
 うむ。これで見たいところは全部廻りました。
 洞内貫通の目的は達成できませんでしたが、
非常に有意義な探索でした。
 全身がもう筋肉痛です。。。

 最後に。。。
 この探索の過酷さを如実に表すお人を紹介しましょう。。。
 小口橋東詰めの空き地、北山川に向けて佇む御仁。。。

 そう、ピカさんでございました。
 私探索をご一緒する機会は結構多いんですが、こんなピカさんは初めて見ました。
 それだけこの泥濘隧道の過酷さを物語っております。

 2度とこんな姿は見たくない! いざ!完全装備でリベンジだ!!!

 
第1部 完